三崎亜記氏の「鼓笛隊の襲来」を前衛小説として安倍公房氏が書くと・・・・・・(2)

三崎亜記氏の「鼓笛隊の襲来」という小説について前回
書いたものの 続きです。

まず、文庫本で18ページの内容なので、作中の文章を抽出して
「鼓笛隊の襲来」原作の内容についてみていこうと思います。

 テレビでは、「専門家」と称する人物が、今回の鼓笛隊がここまで巨大化した理由をしたり顔で解説していた。
「鼓笛隊の襲来」文庫本p14より引用

「さあて、久々に鼓笛隊のおでましだね」
「おばあちゃんが子どもの頃にも、鼓笛隊来たの?」
「ああ、そうだよ。・・・」
「鼓笛隊の襲来」文庫本p17より引用

雨戸越しに耳を澄ませていると、やがて叫ぶ奥さんの声も・・・
「鼓笛隊の襲来」文庫本p22より引用

 列島を駆け抜けた鼓笛隊は、海を渡り、大陸においても甚大なる被害を生じさせたのち、
砂漠上で姿を消した。
「鼓笛隊の襲来」文庫本p23より引用

この抽出された文章を読んだだけで、小説の作り、内容がわかってしまいます。

たとえば、カフカの「変身」を始めた読んだ人は、主人公が変身した「巨大な毒虫」とは何か?
と読者は考え、疎外されるものとか、世界から拒絶されるものなどを想起するでしょうが、
巨大な毒虫が何か? という決定的な答えにはただりつけないと思われます。
そして、この小説がどちらに向かって走っていて、どんな結末を迎えるかは
予想しづらいと思われます。
「物語の中でほどよい距離をとっているメタファー」の存在が読者の想像力をかきたて、
展開が読めないゆえに、読者を小説に引き込んでいくわけです。

「鼓笛隊の襲来」では、
書かれている内容から、鼓笛隊とは台風、またはその代替物であるとしか
推測しえないことになるわけです。つまるところ展開が読めてしまい
読者にとっての物語も終わってしまうのです。

主題になる言葉と、それが現すモノとの間の距離間がちょうどよければ
読者はそれが何を意味するのか決められず、それを考え、次の展開を予測していきます。
また、次が読めないから、読み進むのが小説なのです。
この作品、「鼓笛隊が迫ってくる」という内容は、作り方を工夫すれば
前衛的な安倍公房風の小説になったかもしれないのです。

そこで、
鼓笛隊というものの寓意性を深堀りし、
先が読めない展開に導き、かつ、人を描くという点を考慮してこの作品を
作りなおしてみようと思います。

もちろん、全部の文章を書くことはできないので、ほんのポイントだけ
偉大な小説家・安倍公房氏が書くとどうなるか?
を意識しながら描くわけです。

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