並行して語られる2つの物語が最後につながる小説の書き方。そこにメタファーをもってきた第160回芥川賞受賞作「ニムロッド」

並行して語られる2つの物語が最後につながる小説というものがある。
ブッカー賞 · ゴンクール賞や芥川賞でこのての作品を探すしても、ほとんどおみうけしない。

この2つの物語がつながりそうもないのに、「起承転結」の「結」でつながると
読者は2つがどんなふうにつながっていくかと考えながら読むことになり、
わくわく感や面白さが持続し物語に引き込まれることになる。

ここまで読んでお分かりいただけると思うが、この2つの物語は関係性がなさそうであれば
あるほど、興味をそそり、読みたいという気持ちは持続する。


芥川賞の対象の作品構成でいえば、2人の人物が登場し別々の物語を語りながら
最後にはそれが1人の人物の物語であると象徴的にわからせるなどという小説になるかもしれない。

ところが、上田岳弘氏の
第160回芥川賞受賞作「ニムロッド」は、この並行する2つの物語のサブのほうにメタファー
をもってきている。しかもサブは物語というよりもメタファーの挿話だ。

この手法は少し変わっていて面白い。


ただ、弱点を言えばメタファーであるがゆえに最後にどうつながるかという点では意外性はない。
芥川賞受賞作品であるからあたりまえだが、
物語はこのメタファーと物語の交差ですーっと静かに終わっていく。
きわめて上品で静かで文学優等生的な終わり方だ。


ただ、メタファーを並行して混ぜたことで
「今回はその跳躍力と、ダメな飛行機というコミカルなメタファが奇跡的な相乗効果を生み、稀に見る完成度の高い小説となっている。:選考委員の吉田修一氏選評」
というように非凡な傑作となっている。

ただ物語としての意外性をもたせるのであれば、
映画「猿の惑星」のラストシーンで自由の女神が海岸に打ち捨てられてきたようなメタファー
にすればまた違う衝撃を与える作品が出来上がる。

並行する物語を描く小説でもいろいろな構成が可能で、それによって
面白い効果も出せるのだ。

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