情景描写に、心理描写を織り込んでみたり、情景の途中で過去の追想を、はさむと読者を飽きさせない
情景描写
小説などにおいて、物語の特定のシーンの光景や有様などに関する記述のこと。参照元 weblio
情景描写とは何か? を調べるとそのように説明される。
じっさい、情景描写ばかりが延々と続く小説・文学作品というものも存在する。
ところが、リアリズムが大事だからと情景を延々と説明されても
読者は飽きてしまう。
情景描写が延々と続くと、小説のテーマから離れてしまうから、その表現に直面して読者の興味が減退しだすと
書けばわかるだろうか?
ところが、この情景描写に、心理描写を織り込んでみたり、情景の途中で過去の追想
をはさむと、読者の興味は持続される。
つまり、飽きさせない、面白いと思わせることができる。
それらがテーマとの関係性を保てれば、あるいは保てると読者が
感じれるなら興味が維持できるのだ。
村上龍氏は(初期の小説以降では)この手法がとてもうまい小説家だ。
そこで、村上龍氏の小説「走れ!タカハシ」から
情景描写の後に、心理描写を織り込んでみたり、情景の途中で過去の追想
をはさんで、完成度を高めた小説の一部分を示してみようと思う。
この一文は情景描写から、次に追想が始まる。
この二つの時間差をつなげるものが〝桜〟という単語だ。
〝桜〟という単語が潤滑油のように次の文章に読者の興味
をいざなうのだ。
新学期が始まった。
満開の桜は嫌いだが、新学期はいい。桜にはいやな思い出がある。
俺が高二で妹が中三の頃の四月、ちょうど桜が七分咲きの時期に、
刑事が三人踏み込んできてオヤジを逮捕していったのだった。
村上龍 「走れ!タカハシ」より